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2024.06.03

アスベストと企業責任 工事業者の皆様向け ★☆New





大気汚染防止法の一部を改正する法律が2021年(令和3年)4月1日から順次施行されています。改正では、建物等の解体工事におけるアスベスト(石綿)の飛散を防止するため、全てのアスベスト含有建材へ規制対象が拡大され、また、事前調査結果報告の義務付けおよび作業基準の徹底のため、直接罰の創設等の対策が一層強化されました。
本コラムでは、規制強化の背景と実際に飛散事故が発生した場合に企業に求められる責任についてご紹介いたします。


【大気汚染防止法の改正とその背景】
アスベストを使った建築用資材は1955年ごろから使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化に伴い、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として高度成長期に多く使用されました。
しかし、アスベストを吸い込むことにより、中皮種や、肺がん、石綿肺などの病気を発症することが明らかになり、2006年9月にアスベストの使用は全面的に禁止されました。
一方で、アスベストが大量に輸入された1970年代から1990年代に建てられた建築物の老朽化に伴い、アスベスト含有建材が使用されている建物の解体工事は急激に増加しており、そのピークは2028年前後に約10万棟に達すると見込まれています。





このような状況の中、アスベストの飛散防止対策等を目的として、大気汚染防止法が改正され、2021年4月から順次施行されています。
以下は改正の内容です。
 
≪2021年4月1日施行≫
 ▶規制対象となるアスベスト含有建材をすべての建材に拡大
 ▶事前調査(アスベストを含有する建材の使用有無)方法の法定化
 ▶事前調査結果の記録の保存の義務化

≪2022年4月1日施行≫
 ▶一定規模以上の解体・改修工事※の事前調査結果の都道府県等への報告の義務化 ※建築物の解体:延床面積80㎡以上、建築物の改修:請負金額100万円以上

≪2023年10月1日施行≫
 ▶資格者による事前調査の義務化

【飛散事故発生時の法的責任】
建物等の解体に携わる企業は従業員に対して、生命・身体の安全を確保しながら労働できるよう必要な配慮を行う義務を負っています。(労働契約法第5条「安全配慮義務」)
そのため、作業時にはアスベストの発生、飛散の防止ならびにアスベスト吸引の防止についての必要な措置を講じる必要があります。
これらの措置を怠り従業員に身体上の障害が発生した場合は安全配慮義務違反となり、企業は建設作業者に対して損害賠償責任を負うこととなります。
また、従業員のみならず近隣の住民や工事の発注者に対しても企業が責任を負うケースがあります。
工場からのアスベスト飛散を原因として、近隣住民への損害賠償責任を認められた事案(平成17年クボタショック)や、駅構内のアスベスト吹付け材の除去工事中にアスベストが混じる空気が漏えいし、駅構内および地上換気塔周辺に拡散したために工事業者が発注者から損害賠償請求された事案(平成29年六番町駅アスベスト飛散)など、アスベスト飛散によって企業が責任を問われるケースは多岐にわたっています。


【アスベストと公的補償】
アスベストによる健康被害を受けた方には、現在3つの公的補償制度があります。以下、各制度の概要です。

➀労災保険制度
業務中にアスベストを取り扱い、健康被害を受けた場合には、業務災害として労災認定を受けることで、労災保険の給付を受けることができます。
労災保険の給付対象者は、労働者および労災保険の特別加入者となります。労災保険では医療費や休業補償等を受けることができます。
なお、労災保険は②石綿健康被害救済制度との併用はできませんのでご注意ください。
※労災保険の内容
https://www.erca.go.jp/asbestos/mesothelioma/system/rousai.html
(出典:独立行政法人 環境再生保全機構)

②石綿健康被害救済制度
労災保険の対象とならないアスベスト被害者やそのご遺族が対象となる制度です。医療費、療養手当、葬祭料などが給付されます。
 ※石綿健康被害制度の内容
https://www.erca.go.jp/asbestos/mesothelioma/system/kyuusai.html 
(出典:独立行政法人 環境再生保全機構)


③建設アスベスト給付金制度
令和3年6月に、国会で成立した「特定石綿被害建設業務労務者等に対する給付金等の支給に関する法律」に基づく制度です。特定の期間に建設業務に従事していたことが条件となっており、病態に応じて給付金が支給されます。
 ※建設アスベスト給付金制度の内容
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kensetsu_kyufukin.html 
(出典:厚生労働省HP)
 

ただし、いずれの補償制度も健康被害を救済するものであり、飛散したアスベストによる財物の汚損や除去費用などは対象外となっています。 


【民間損害保険と注意点】 
これまで見てきたように、アスベスト除去工事中に飛散事故が発生した場合、企業はさまざまなリスクを負うこととなります。事故を発生させないために法令を遵守することは大前提ですが、規則や通知、ガイドライン、自治体ごとの条例・規則・指導要綱を理解しておくことも非常に大切です。
 
しかしながら、充分な対策を施したうえでも、機械の故障や予期せぬ突風、人為的なミスなどにより、事故を完全に防ぐことは困難であることも事実です。
公的な補償制度は存在しますが、事故発生時に思いもよらぬ高額賠償請求がなされる可能性も否定できません。
 
このような事態に備えるための保険ですが、一般に損害保険におけるアスベストの取り扱いは特殊であるため、すでに各種損害保険を活用されている建設業者様も含めて補償内容をよく確認しておく必要があります。
 
ご加入中の保険が、アスベスト飛散時の除去費用を補償するプランであるかどうかが不明な方は、窓口である保険代理店や保険会社に確認することをおすすめいたします。


【まとめ】
 これから増加が見込まれるアスベスト除去作業ですが、法律の改正により規制が強化され、企業に求められる責任は重いものとなってきています。法令はもちろん、規制や通知、ガイドラインなども目まぐるしくアップデートされますので、常に最新の情報を取り入れ、適正な対応をとることが重要です。
また、万一の際の飛散事故に備えて適切な保険に加入しておくことも、リスク管理の点では必要だと考えられます。

大和ライフネクストではアスベスト飛散時の除去費用を補償する保険を取り扱っております。ご関心のある方は、お気軽に下記までお問い合せください。



      

 
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