1.事業継続力強化計画とは
「事業継続力強化計画」という言葉をご存じでしょうか。
「もちろん知っている」「既に認定を受けている」という方もいれば、「なんとなく知っている」「BCPとの違いがわからない」という方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
ご存じのとおり、日本は地震や集中豪雨といった自然災害の多い国です。自然災害によって業務に大きなダメージを受ける企業が多いのも実情です。
そこで中小企業庁は、自然災害などの緊急時に備えて、事業継続のための方法や手段を取り決めておくBCP(事業継続計画)の策定を中小企業に推奨してきました。ところが、BCPを策定する中小企業はなかなか増えず、東京商工会議所が行った2023年の調査によると、中小企業の約7割がBCP未策定の状況だということです。
このような状況下で、中小企業の事業継続に関する取り組みを支援するために、2019年より開始されたのが事業継続力強化計画認定制度です。
中小企業庁が推進する本制度では、中小企業が防災や減災に関する事前対策の計画を策定し、経済産業大臣に申請し認定されることで、税制優遇や金融支援のほか、補助金の加点などの支援を受けることが可能となります。
なお、2024年8月末時点で7万590社の中小企業が認定を受けています。
(出典:中小企業庁HP)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/keizokuryoku/nintei_ichiran_chiiki.pdf
認定を受けた企業は、認定のロゴマークをホームページや名刺などに活用することができます。顧客や取引先にとっても安心材料となり、社会的な信用の獲得につながります。
(引用:中小企業基盤整備機構HP)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.html#logomark
2.BCPとの違い
では、事業継続力強化計画とBCP(事業継続計画)は何が異なるのでしょうか。
言葉は似ていますが、事業継続力強化計画は、BCPで検討する必要のある要素を一部に絞ることで、対象となっている中小企業の負担軽減に配慮する内容となっています。
事業継続力強化計画では、認定を受けることでさまざまな支援や優遇措置を受けられますが、BCP作成にはそのような支援や優遇措置はありません。
3.事業継続力強化計画認定により受けられる支援・優遇措置
実際にどのような支援や優遇措置が受けられるのかをご紹介いたします。
(出典:事業継続力強化計画認定制度の概要(中小企業庁HP))
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/keizokuryoku/tebiki_gaiyo.pdf
税制優遇
税制優遇措置としては、中小企業が災害への事前対策を強化するため、自家発電設備・制震・免震装置など一定規模の設備を導入した場合に、防災・減災設備に対して特別償却(18%)が適用されます。
※対象となる設備例
自家発電設備、浄水装置、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置、変圧器、止水板、防水シャッター等
金融支援
金融支援としては「信用保険の保証枠の別枠追加」や「防災にかかる設備資金の貸付金利引き下げ」があります。特に、保証枠の別枠追加は資金面でのメリットが大きく、事業継続のための有効な手段といえるでしょう。
※保証枠追加の例
普通保険 別枠追加2億円
無担保保険 別枠追加8,000万円
特別小口保険 別枠追加2,000万円
予算事業等による加点措置・必須要件
認定事業者は、次の予算事業において加点措置を受けることができます。
※加点措置対象の事業例
ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、事業承継・引継ぎ補助金
また、被災した場合における復旧等の費用を補助する予算事業の申請の際には、認定事業者であることが必須要件となっています。
※必須要件となっている事業例
地方公共団体による小規模事業者支援推進事業費補助金(災害活用)
グループ補助金/なりわい再建支援補助金
令和6年能登半島地震 石川県なりわい再建支援補助金の受給要件に、「事業継続力強化計画等が策定済み(予定)であること」が記載されています。
(出典:石川県HP)
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kinyuu/keieishien/documents/0_nariwai_overview.pdf
損害保険料等の割引
認定を取得した事業者のリスク実態において、損害保険会社等では保険料の割引を行い、中小企業の事業継続力の強化を後押しします。
4.制度認定のために活用できる支援制度
制度認定に向けては、中小企業強靭化法の基本方針に基づき各ステークホルダーの支援が期待されています。具体的には、連携する企業や地方自治体、地域金融機関からの次のような支援です。
➀サプライチエーンにおける親企業
取引先中小企業へのセミナーを通じた普及啓発、事前対策の実施支援、下請協力会や業界単位での取り組みの支援
②地方自治体(都道府県・市町村)
認定制度活用促進のための普及啓発や独自のインセンティブ付け、普及啓発及びBCP策定支援・補助金・制度融資等の支援措置
③損害保険会社
事前対策の取り組み状況等を踏まえたリスクに応じた保険料の設定、ハザードマップを活用した災害リスクの啓発やBCP策定等の対策支援
④地域金融機関
災害対策の普及啓発、事前対策に必要な資金の融資、災害時に備えた事前の資金繰り相談・コミットメントラインなどの対応
5.損害保険を活用しましょう
中小企業庁が実際に被災した中小企業に実施したアンケートによりますと、事業の復旧に役立った対策として損害保険が有効であることが明らかになっています。
※出典 BCP×保険 中小企業庁
※https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/pamflet/hoken.pdf
事業継続力強化計画認定で金融支援を受け、保険に加入することは、事業継続のために非常に有効な手段です。地震保険はもちろんのこと、休業補償保険や天災対応型の労災上乗せ保険など、中小企業のバックアップとなるさまざまな保険商品があります。ぜひ一度、ご検討されてみてはいかがでしょうか。
本記事の掲載内容に興味がありましたら、大和ライフネクストまでお気軽にお問合せください。
企業向け保険情報メールマガジンをご希望の方はこちらよりご登録ください。
【取扱代理店】
大和ライフネクスト株式会社
インシュアランスエスコート部
〒107-0052 東京都港区赤坂5-1-33
新着情報・セミナー情報
2024.11.01