能登半島地震から1年が経ちました。改めまして被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げます。能登半島地震は元日に発生したこともあり業務中に従業員が被災した例はあまり聞こえてきませんが、東日本大震災では業務中に被災された従業員も多数おられ、遺族から企業が訴えられたケースもありました。今回は地震と労働災害についてご案内いたします。
1. 地震による労災保険の適用基準と手続き
1.1 労災保険の基本概要
労災保険は、労働者が業務上の事由または通勤によって負傷、疾病、障害、または死亡した場合に、その労働者や遺族に対して給付を行う制度です。
労災保険の対象となるのは、正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトなどの非正規雇用者も含まれます。保険料は全額事業主が負担し、労働者からの負担はありません。
1.2 地震による業務災害
業務災害とは、労働者が業務に従事している際に発生した災害を指します。地震による業務災害は、オフィス内での勤務中、出勤・帰宅途中、さらには出張中など、さまざまなシチュエーションで発生する可能性があります。これらの状況において、従業員が負傷、もしくは死亡した場合には労災認定の対象となります。
東日本大震災の際は特例として行方不明者に対しても労災支給が行われました。
(出典:厚生労働省からのお知らせ)
https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/120731-1.pdf
2.自然災害と安全配慮義務
2.1安全配慮義務とは
安全配慮義務とは、企業が従業員の安全と健康を確保するために必要な措置を講じる法的義務を指します。特に地震などの自然災害が発生した場合、企業は従業員の安全を守るために適切な対応を取ることが求められます。この義務は労働契約法や労働安全衛生法などに基づいており、企業が従業員に対して安全な労働環境を提供することを目的としています。
2.2 安全配慮義務が争点となった判例
東日本大震災にて犠牲者を出してしまった七十七銀行女川支店は、遺族から損害賠償を請求されました。この事案は、地震発生後、支店長の指示で同支店の行員らが3階建てビルの屋上に避難したものの津波に流され、1名を除き死亡もしくは行方不明となってしまった事案です。
仙台地方裁判所は、予見可能性がなかったことを理由として、具体的な安全配慮義務違反の事実は認めず、使用者の損害賠償責任自体は否定しましたが、自然災害発生時においても使用者の安全配慮義務が存在することについては明確に認めました。
(仙台地裁平成26年2月25日判決・判例時報2217号74頁)
このことより、企業としては自然災害対策を行うとともに、万が一の際に多額の賠償金を
支払う可能性に備えておく必要性について広く認識されることとなりました。
3. 地震災害に備えるための企業の取り組み
3.1 企業が行うべき地震対策
中小企業の経営者や人事責任者にとって、安全配慮義務は特に重要です。地震が発生した際に従業員が安全に避難できるよう、事前に避難経路や避難場所を明確にし、定期的な避難訓練を実施することが求められます。また、建物の耐震性を確認し、必要に応じて補強工事を行うことも重要です。さらに、地震発生後には迅速に従業員の安否確認を行い、必要な支援を提供することが求められます。
これらの対策を講じることで、企業は従業員の安全を確保し、労働災害を防止することができます。
3.2 基本型労災上乗せ保険の落とし穴
地震対策を行うとともに、ぜひ行っておきたいことは、企業が加入している労使上乗せ
保険の補償内容の確認です。業務向け傷害保険や法定外労働総合保険などで、政府労災
の不足分をカバーしている企業は多いと思われますが、加入している保険が地震に対応しているかどうか確認しておきましょう。
損害保険会社によって違いはありますが、ほとんどの損害保険は基本補償だけでは地震に
よる損害を補償していません。地震補償の特約を付帯する必要があります。
政府労災は認められたのに、お見舞金や弔慰金として支払うことを想定して加入した労災上乗せ保険が支払われなかったとなれば、企業防衛の意味が無くなってしまいます。
ご加入の代理店に相談するなどして内容を確認しておきましょう。
3.3 天災対応型の労災上乗せ保険のご案内
地震による災害時に従業員を補償したいという企業は、天災対応型の労災上乗せ保険を検討しましょう。現在加入している保険に特約を追加するということも保険会社によって
は可能です。
また、安全配慮義務違反により遺族からの訴訟に備えたいという企業は、使用者賠償責任特約を付帯することも検討しましょう。
いくら対策を行っても、安全配慮義務違反を100%回避することは現実的に困難です。
企業防衛のために労災上乗せ保険の内容を見直しましょう。
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2025.01.06