1.自然災害と工事施工会社のリスク
近年、台風や暴風による自然災害が毎年のように発生し、生活環境や企業活動に大きな影響を及ぼしています。
地球温暖化により自然災害は激甚化が避けられなくなっており、環境省も注意喚起をしています。
※参考「気候変動による災害激甚化に関する影響評価結果について」環境省
000175543.pdf (env.go.jp)
屋外で施工業務を行う企業にとって、自然災害による事故は避けられないリスクです。具体的なリスクとしては、強風による工事中の足場の崩壊や、仮設物の飛散などが挙げられます。
これらの事故が発生した場合に、施工会社は法律上の責任を負うのか否か、関心を持たれる方も多いと思います。
結論からお伝えしますと、自然災害に起因する事故は法律上「不可抗力」として扱われることが多く、損害賠償責任を負わないことが基本です。
※不可抗力とは、当事者の合理的支配を超える外部の事象によって、通常必要とされる注意や予防を尽くしても避けられない状況を指します。天災や戦争、暴動などが例として挙げられます。
しかし、全てのケースにおいて責任を負わないわけではないので、注意が必要です。
2.施工会社の責任が認められたケース
自然災害による損害で施工会社の責任が認められたケースとして、設置した防音パネルが台風の強風により隣接するビルに飛来し、ビルの窓ガラス、カーテンウォールおよび柱タイルを破損させたことに対し、施工会社の損害賠償責任を認めた事例があります。
このケースでは、施工会社はビルの解体工事を行っていました。当日は台風の襲来が予想されており、施工会社は足場の倒壊や防音パネルの飛散を防ぐ風抜きの措置として、防音パネルの縦1列を外していましたが、そこから入る風の抜け道を確保していなかったために、防音パネルが飛散してしまいました。
結果として、施工会社が養生として不適切な措置を施した点に過失が認められ、賠償責任が認められました。(東京地裁令和4年9月12日判決)
3. 賠償責任有無の判断のポイント
この事故が起こった日は、東京都大田区および八王子市で観測史上1位を記録するほどの強い台風が発生していたことが記録されています。これだけを聞くと「不可抗力だったのではないか」とも思えますが、判断のポイントは「施工会社がこのような事態を予見できていたかどうか」にあります。
施工会社は防音パネルの縦1列を外していますので、台風によって事故の発生を予見していたと判断されました。予見していたならば、十分に耐えられる養生をすべきところ、風の抜け道を確保しなかったことは不適切であり、結果として施工会社の過失であると判断されました。
また、「ほかの現場でも同様の事故が発生していたか」もポイントとなりました。実際に別の施工会社の現場では、同じ日に同様の事故の発生はありませんでした。この事実から、確かに観測史上1位の強風ではありましたが、事故の原因は施工会社が行った「不適切な養生」だったと結論づけられています。
4. 自然災害に対する企業の備え
この事例から学べることは「自然災害が原因となる事故であっても企業が責任を負う可能性がある」という点です。
自然災害による企業責任を負うリスクを最小限に抑えるためには、日頃から、台風や地震が発生した場合に工事現場ではどのように対応すればよいかの計画を立てておき、自然災害による事故防止策の策定や災害発生時の対応訓練を行うことが大切です。
そして、それでも事故が発生してしまった場合に備えて、適切な損害保険に加入しておくことが重要です。第三者に損害を与えてしまった場合には、対人事故・対物事故を問わず高額な賠償責任を負う可能性がありますので、そのような事故に対応した損害賠償責任保険に加入しているのかどうかを確認しておきましょう。
また、保険会社によっては、不可抗力が認められて賠償責任が生じないケースであっても、近隣の被害者のために見舞金の一部を補償する保険が販売されています。
万が一の自然災害による事故に備えて
・工事中の損害賠償責任保険に加入しているか
・見舞金を補償するプランに加入しているか
を確認することをおすすめします。
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2025.06.25