コミュニティで取り組む震災対策

マンションコミュニティのあり方について

東日本大震災の際、多くのマンションで住民同士が助け合い、支えあう姿が見られました。
行政からの公助を待つのではなく、自助やコミュニティによる共助が大切だと言われています。
いざというときに日頃のつながりが大切、ということを実感できるきっかけになりました。
では、効果的な震災対策をする上で、どのようにコミュニティの力を活かしていけばいいのか、見ていきましょう。
 

震災対策の基本

建物の破損、倒壊から、ガス、上下水道、電気、通信網などのライフラインの停止。そして、エレベーターや機械式駐車場の稼働停止、停電、トイレ、食糧など、様々な対処すべき問題が次から次へと発生します。
災害によって起こる被害のすべてに備えることは現実的に不可能です。個人で出来ること、コミュニティで協力して出来ることを整理して必要最低限備えるものは何なのかを考えます。

個人で出来る震災対策

日々の生活の中で準備や小さな工夫が被害を軽減してくれます。すぐできる、簡単にできる震災対策を紹介します。

家具等の転倒防止

地震の揺れによって、家具の転倒、ガラスの飛散などで大けがをしたり、人命が失われることがあります。安全策を講じましょう。
  • 家具の転倒防止、引き出しの飛び出し防止などの策を講じる
  • 重いものは下段、軽いものを上段に収納する

避難経路の確保

マンションの避難経路は通常、玄関とバルコニーの2方向になります。バルコニーに大きな物などを置いておくと避難時の妨げとなります。
また、下階への避難ハッチの上にも物を置かないようにしましょう。自分の部屋のバルコニーに避難ハッチがない場合は、隣の住戸との間のパーティションを破り、そこにある避難ハッチから下階へ避難します。

非常用品の備蓄

国や自治体の支援が始まるまでに生活に必要な備品をチェック・準備しましょう。
  • 飲料水(1日1人3リットルが目安)
  • 非常食(保存期間が長く、火を通さないで食べられる食品)
  • 医薬品、簡易トイレ
  • 衣類(重ね着の出来る衣類、防寒具、毛布、下着類、靴下、軍手、雨具、カイロ)
  • 懐中電灯、携帯ラジオ、電池(携帯ラジオは充電式が便利。携帯電話を充電できるものもある。)
  • 貴重品(管理方法を決めておくと持ち出しに便利)
  • 日用品(笛、ガムテープ、ビニール袋)
※家族構成や健康状態などの事情により、非常時に用意するものは各家庭で変わります。

自分たちのマンションを知っておく

マンションといっても、構造や所有状況、管理の仕組みなどさまざまです。災害時はマンションごとの問題が発生するため、自分たちのマンションの安全性や被害を受けた時に発生する可能性のある問題を知り、できるだけの対策を講じておきましょう。
建築基準法の耐震基準は1981年(昭和56年)に強化されています。それより前の建築建物は、耐震診断も検討してみましょう。

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避難場所・緊急連絡先 や連絡方法の確認

避難場所や外出時の相互の連絡方法の確認をしておきましょう。
  • 地域の避難場所の確認(ハザードマップの確認)
  • 家族間の連絡先と連絡方法の確認(例.災害用伝言ダイヤルの活用やSNSなど)

管理組合でやるべき震災対策

震災などの災害時には、管理組合の果たすべき役割は大きくなります。住民の生命と財産を守るために、管理組合として災害に備えておくことが必要です。

住民名簿・緊急安否 確認方法の整備

管理組合として作成する入居者名簿とは別に、防災用の名簿を用意し、場所を決めて保管するなどすぐに取り出せるようにしておきましょう。プライバシー保護にも十分考慮してください。
  • 管理組合運営用:部屋番号と氏名のほか連絡先まで入ったもの
  • 防災用:家族の人数、お年寄り、障がいのある方、小さなお子さんなどの家族構成や、緊急連絡先、携帯電話などについても記載

非常用品の備蓄

管理組合として、生命・安全の確保から健康の維持まで幅広く対応するための物資を用意する必要があります。
  • 備蓄設備の設置。
    ※停電でエレベーターが使えない時のことを考え、高層マンションの場合には各階にある程度の用品を保管することや、備品台帳を作成し、在庫、保管期限を管理することを検討しましょう。
  • 飲料水、食糧(戸数分×約1週間分)
  • (以下、救助や安否確認などに必要なものをリスト化)
    トラロープ/スコップ/ガムテープ/バール/脚立・ハシゴ/ジャッキ/台車/ノコギリ/
    懐中電灯/ハンマー/発電機/ナイフ・ハサミ/ハンディマイク/ビニールシート/
    トランシーバー/ポリタンク/ラジオ/ヘルメット/医薬品/腕章/テント/笛/浄水器/
    組立式の簡易トイレ/ 軍手・ゴム手袋/バケツ/毛布

防災マニュアルの作成

管理組合として、災害が起こったときの行動指針や手順、避難生活における行動基準を定めたもので、住民に災害時にどのように行動すべきかを示すものになります。 作成だけにとどまらず、説明会や訓練を定期的に行い、周知の徹底をしていくことが大事です。
※詳しくは防災対策マニュアル作成ガイドをご覧ください。
防災対策マニュアル作成ガイド

避難訓練

防災マニュアルに沿って、定期的に防災訓練を実施しましょう。本部班、救護班など役割を決めて避難経路、緊急避難場所の確認を行うとともに、消火器や火災報知機の設置場所も把握しましょう。
起震車で激しい揺れを体験したり、消火器で燃え盛る火を消してみる、こうした訓練をみんなで積み重ねることが、いざという時に役立ちます。
消防署に相談をすると、消火器の貸し出しやビデオの上映など、防災訓練の協力を得ることができ、アドバイスもしてくれます。

いざというときに防災対策の効果をさらに高めるコミュニティ活動

普段からの関係や連携作りのための活動

非常用品・食糧の備蓄、避難経路の確保をしたり、災害時対応マニュアルの作成など日頃からの準備は重要です。ですが、形だけを整えても実践されなければ本当に機能する防災対策とは言えません。

そのベースとなるのがマンション内のお付き合いからはじまる関係づくりです。お互いに知っているからこそ助け合おうという連携や意識が生まれてくるものだと思います。

近年、多くのマンションでは住民参加のイベントを定期的に開催する例が増えてきています。 防災対策説明会、避難訓練だけではなく、七夕・夏祭りや冬のクリスマス会や新年の餅つき大会には大勢の住民の方が参加されています。
大型・高層マンションでは、避難や連絡などの災害時の行動において、フロアが1つのまとまりになります。
フロア交流会を実施したり、サークル活動やカルチャー教室などを通じて住民同士の接点を持とうと努めているマンションもあります。

そのようなマンションでは、東日本大震災に際し、各住戸の安否確認を行う場合でも、ご高齢の方の住まいを把握されているので自発的な声かけにつながっていました。

常日頃からのコミュニケーションや関係作りがあってこその防災対策と言えるのだと思います。