健康経営の課題
巡回や清掃等、身体活動を伴う業務が多いマンション管理員等の建物勤務者においては、高齢化に伴い怪我や筋骨格系疾患による長期療養が休職者全体の4割を占め、アブセンティーイズムだけでなく、完全回復のまでのプレゼンティーイズムが重要課題となっています。特に60歳以上の従業員の加齢に伴い現れる体調不良や体力・運動能力の低下を未然に防ぎ、健康で長く活躍できるよう、建物勤務者の怪我・骨格筋系疾患(業務中の怪我も含む)による休業に関し、(2019年~2022年における平均:100件/年、休業日数30日)の10%の削減を目指し、運動プログラムの開発等各種取組みを進めております。
また離職に繋がりやすい脳血管疾患の予防(血圧・血糖等の重症化予防)も重要となっています。事務所勤務者では若年層の喫煙率の高さ、コロナ禍以降のメンタル不調による休職者の増加、プレゼンティーイズムが主な課題です。
事務所勤務者のプレゼンティーイズムの5%改善、仕事とプライベートの切替えがしやすい職場風土の醸成(従業員アンケートによる「できている」の回答結果が85%)を目標に掲げ、働きやすい職場づくりやラインケア等のサポート強化に継続的に取り組んでいます。これらの課題解決に向けて、安全衛生・健康管理体制強化施策と社員一人ひとりが自身の健康に関心を持ち、楽しく取組みながらヘルスリテラシーが向上する施策の2つの取組みを軸に健康宣言の実現を目指しています。
課題解決に向けた取組み
定期健康診断の100%受診と重症化予防
定期健康診断受診率100%を目指すとともに、健康保険組合・産業医・保健師・職場とが連携を取りながら受診勧奨、治療状況の確認、保健指導など個別の事後フォローを徹底し二次検診の受診率改善に取り組んでいます。
その中でも特に高血圧・糖尿病の有所見者を中心とした健康ハイリスク者に対するサポートを強化し、2025年度までに勤続1年以上の従業員の「血糖リスクと考えられる人の割合(空腹時血糖が200mg/dl以上の人の割合)」がゼロを目指しています。
ストレスチェックの実施とメンタルヘルス対策
毎年1回ストレスチェックを実施し、受検率80%以上を維持しています。高ストレス者には産業医との面談を推奨しメンタル不調の未然防止に努めています。また、近年不調者が増加傾向にある入社3年未満の事務所勤務者に対しては、高ストレス該当者全員に対し保健師よりアプローチを行い産業医との面談を実施しています。合わせて、ご家族も利用できる社外相談窓口に加え、産業医・保健師による社内相談窓口を設置し、ニーズに合わせた健康相談等に対応できる体制を整えています。
- 2022年度よりストレスチェックテスト時に生産性に関するアンケートを追加し、プレゼンティーイズムのデータ収集を開始しました。コロナ禍以降、事務所勤務者のメンタル不調による休職者が増加傾向にあり、建物勤務者に比べプレゼンティーイズムも高い状況にあります。
- プレゼンティーイズムによる損失が多い層の特性を踏まえた内容を健康セミナーやセルフケア教育に取り入れました。
- e-ラーニングによるメンタルヘルス教育を毎年実施、ストレスへの気付き、ストレスコーピングに対する知識の習得等を進めています。
- 管理職に対して、昇格時と年1回定期的にラインケア教育を実施、テスト・アンケートにて習熟度とニーズ把握を行っています。また、ラインケアに関するハンドブックも整備し、管理職が常に閲覧・関係機関に連携できるようにしています。
[受講者の感想]
・表面しかわかってないことが多数あったことが理解できた。
・メンタル不調に「気付く」力と、初動の大切さを、引き続き浸透させていただくようお願いいたします。
ヘルスリテラシー向上・プレゼンティーイズム対策
- 社内ポータルサイト内に、健康経営専用ページを開設。健康情報だけでなく、安全衛生に関する全ての情報を集約したプラットフォームとして活用しています。紙媒体のニーズが高い建物勤務者等に向け、社内報の中で健康や安全をテーマにしたコーナーを設け、時季に応じた健康情報や保健師のコラムを掲載し、社員の安全衛生教育とヘルスリテラシーの向上に取り組んでいます。
- 入社直後からセルフケア意識が身に付くよう、新入社員を対象に保健師による健康セミナーを実施しています。
- リテラシー向上の機会として、全従業員に向けて定期的に外部講師によるオンラインでの健康セミナーを開催し健康維持と生産性向上のテーマを適宜取り入れ、プレゼンティーイズム改善のきっかけになることも期待しています。
シニア層の運動機能低下防止・労災削減
筑波大学SWC政策開発研究センターと「マンション管理業を行う高齢社員の健康維持・管理に資する体力向上プログラムの開発」をテーマとした共同研究をスタート(2025年3月完成予定、投資額:300万円)。
各安全衛生委員会とも連携を取りながら全社への浸透を図るとともに、転倒等による労働災害発生件数の削減に繫げ、2028年までに建物勤務者の怪我・筋骨格系疾患(業務中の怪我も含む)による休業(2019年~2022年において平均100件/年、休業日数30日)の10%削減を目指し、イキイキと仕事をすることができているシニア層の加齢による運動機能低下に対するフォローを強化することでより長く活躍して頂くことができるようサポートしていきます。
また、建物勤務者の休職理由の17%を占める労働災害抑止のため、事故発生都度、案件ごとに問題点の発見、再発防止策および対策後のリスク評価を行うとともに、各安全衛生委員会での協議を実施しています。
(労働安全衛生マネジメントシステムについては未整備ですが、社内のリスク管理委員会等を通し、安全衛生委員会の適切な運営を図っています。)
運動習慣改善
デスクワークにより運動不足となりやすい事務所勤務者に向けては、在宅からも参加できるオンラインセミナーや集合形式でのヨガレッスン等を開催しています。
一部事務所にて、毎日決まった時間にラジオ体操を実施しています。「やり始めてから体の調子がいい」、「気分がリフレッシュできる」などの声もあり、従業員の健康増進・活力向上に繋がっていることを実感するとともに、出社している従業員があたり前のように行う風土になってきています。
西新宿事務所オフィス内にバランスボールやストレッチができるスペースを設置。健康を意識しながら業務ができる執務スペースづくりを行っています。
運動を気軽に始められるよう、スポーツクラブの従業員割引制度や社内クラブ活動への費用補助などの支援を充実させています。社内クラブ活動では、認定クラブ数67、800名以上が所属する取り組みになっています。
生活習慣病予防
定期健康診断時に各種がん検診を実施しています。
- 胃がん検診
- 乳がん検診
- 歯科検診
- 肝胆ウイルス検査
- 肺がん検診
- 子宮頸がん検診
- 眼底検査
- 脳ドック
- 大腸がん検診
- 前立腺がん検診
- 腎機能検査
- 骨密度測定
大和ハウス工業株式会社・みらい価値共創センター(コトクリエ)と協働し、Heart Beat(トランポリン)を用いて、運動習慣改善、ストレス解消、パフォーマンス向上を図る「Office Fit」というサービスの取組みをトライアル実施しています。
受動喫煙対策
- 受動喫煙対策:テナントの共有喫煙スペースを除き、全職場において建物内または敷地内禁煙を徹底、勤務時間中の喫煙ルールを設定しています。定期的に健活アンバサダーによる喫煙環境調査を実施、安全衛生委員会にてモニタリングしています。
- 特に事務所勤務の20~30代・男性社員の喫煙率が全国平均と比べ高いため、従来の卒煙サポート(健保と協働)と並行し、若年喫煙者をターゲットに若年層特有のニーズたに沿ったサポートとなるよう対象者への産業医等による保健指導を開始しました。
安心して働き続けることができる職場づくりへの取組み
- 60歳以上の従業員が、自分らしい人生を送りながら当社でイキイキと活躍し続けられるよう、2021年より週3日~の勤務条件を柔軟に選択できるシニア・ライフアップ制度を導入しました。※職種による制限があります。
- 生涯を通して安心して働き続けることができるよう、病気や結婚・出産・介護等、人生における出来事に際して様々な制度や手当を設けて社員を支援しています。
- 女性に対する出産・育児期間のサポートとして、法定以上の育児時短勤務・日短勤務ができる制度や「マタニティ時短」と称した妊娠中の従業員についても時短勤務ができる制度を設けるなどワークライフバランスを実現するための支援を充実させています。
- 病気や怪我に際しての治療と就労の両立支援に力を入れています。安心して治療に専念し復帰を目指せるよう、管理職・人事・産業医が連携できる体制を構築し、復職中~復職後のサポートを進めています。
現在、体調理由による離職が24.7%と以前より悪化傾向にありますが、1日単位で取得可能なケア休暇の導入予定(2025年4月~)であり、制度面での充実により20%以下への改善を目指します。 - 私傷病により休職した従業員が、休職中~復職後も相談しやすい体制の構築に向け、ガイドラインの作成など管理職へのラインケアの知識不急を行い、管理職・産業医・保健師の連携による支援を強化しています。
- 従業員の働きがい向上を目指し、毎年一部従業員に「働きがいアンケート」を実施しています。
「働きがい」を可視化するとともに、働きがいを高める因果関係分析を詳細に行い、その結果を踏まえ、当社の人材ポリシーの考えに則った制度や仕組み、環境を見直していくことにより、従業員の「働きやすさ」の向上だけでなく「仕事のやりがい」も足し合わせた「働きがい」をより高めていくことに注力しています。
当社の働きやすさに影響度の高い『安全安心な職場環境』『ワークライフバランス』のスコアをKPIとして設定し、必要に応じた制度等の見直しや各職場ごとにマネジメントの振返りを行う機会を設けています。
アンケートの回答率は90%を超えるなど従業員の関心も高く、働きがいの数値も毎年高いスコアで推移しています。 - メリハリをつけて柔軟に働くことができるようにするためのフレックス制度の活用推進や時間外削減に向けた業務改善により、時間外は削減傾向、有給取得率も回復してきています。
- 社員同士の関係づくりやコミュニケーションの活性化が図れるよう、様々な取組みを整えています。
また、部署を超えた交流も大切にしており、チームワークの向上や仕事上のやり取りの円滑化にも繋がっています。
ともごはん
部署が異なるメンバー同士で食事をする際に、補助金を支給する制度です。部署を越え、個々の力を発揮することができるチームワークづくりにつながっています。
飲み会やランチ会に対して一人1,000円/回の補助金を支給します。
Thank You ポイント
一緒に働く仲間へ、感謝のメッセージを添えてポイントを贈ることができる制度です。
毎月一人500ポイントが付与され、感謝を伝えたい相手に1回100ポイントを贈ることができます。贈られたポイントは給与に換算され、100ポイント=100円で支給されます。
クラブ活動
同じ趣味がある社員同士が集まり、クラブ活動を行う際に、補助金を支給する制度です。現在60ほどのクラブがあり、一緒に趣味を楽しむことで心身をリフレッシュしています。参加者には補助金600円/回を支給し、活動を支援しています。